環境にやさしいAgBiS2ナノ結晶の合成条件を解明 -高性能光検出器への応用に期待-
環境にやさしいAgBiS2ナノ結晶の合成条件を解明
-高性能光検出器への応用に期待-
国立大学法人中国竞彩网大学院工学府化学物理工学専攻のFidya Azahro Nur Mawaddah氏、Dadan Suhendar氏ら、同大学工学研究院先端電気電子部門のSatria Zulkarnaen Bisri(ビスリ?サトリア)准教授、および同大学工学研究院先端物理工学部門の箕田 弘喜教授、清水 俊樹助教は、環境にやさしい材料として太陽電池および光検出器への応用が期待されるAgBiS2ナノ結晶について、合成反応の際の温度によって異なる組成の結晶が得られることを明らかにしました。これにより、より正確なAgBiS2ナノ結晶の合成の制御が可能となりました。また、この材料が光検出器において高い性能を示すことを発見しました。この成果は、環境にやさしい光エレクトロニクスの実現に貢献することが期待されます。
本研究成果は、Nanoscaleへの掲載に先立ち、8月4日にオンライン掲載されます (Advanced Article)。
【報道解禁】2025年8月4日(月) 午後5時(日本時間)
論文タイトル:Evolution of the formation of AgBiS2 colloidal nanocrystals for optoelectronic devices
URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2025/nr/d5nr01707f
背景
これまで、半導体ナノ材料の分野では水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、もしくは鉛(Pb)を含む材料について研究が進められてきました。しかし、これらの金属元素は環境および人体への高いリスクが懸念されています。一方で、環境に配慮したナノ材料の研究は十分に進められておらず、光電子デバイスへの応用においても高性能化が課題となっていました。
そのような中で、近年注目されているのが銀(Ag)、ビスマス(Bi)、硫黄(S)で構成されるAgBiS2ナノ結晶です。しかし、この材料についてもデバイスの性能の向上には至っておらず、結晶自体の性質にも未解明な点が残っています。
そこで本研究では、AgBiS2ナノ結晶の合成における反応の温度と生成物の関係を調査し、さらに光検出器デバイスの作製および光吸収効率などの物性値の評価を行いました。
研究体制
本研究は、国立大学法人中国竞彩网大学院工学府化学物理工学専攻のFidya Azahro Nur Mawaddah氏、Dadan Suhendar氏、田中 雄大氏、北田 慧士氏、同大学工学研究院先端電気電子部門のSatria Zulkarnaen Bisri(ビスリ?サトリア)准教授および同大学工学研究院先端物理工学部門の箕田 弘喜教授、清水 俊樹助教により行われました。本研究の一部は、公益財団法人池谷科学技術振興財団、公益財団法人ヒロセ財団、公益財団法人 JKAの助成を受けて実施されました。
研究成果
本研究では、AgBiS2ナノ結晶の合成反応の際の温度に着目し、各温度で得られた生成物について、X線を用いて結晶構造や組成を調べるX線回折法(XRD)や電子線を用いて粒子の形やサイズ、ナノレベル構造を調べる高分解能電子顕微鏡法(HR-TEM)を用いて分析しました。その結果、160℃を超えるとAgBiS2が得られるなど、温度によって異なる組成をもつ結晶が合成されることを明らかにしました。
さらに、本研究ではAgBiS2ナノ結晶を用いた光検出器の作製も行いました。作製した光検出器は応答度37 A/Wを示しました。この値はこれまでに報告されてきたAgBiS2を用いた光検出器を上回るものであり、高い光吸収効率を持つことが示されました。
今後の展開
今後は、AgBiS2ナノ結晶のサイズ制御技術を発展させ、より精密な合成を行い、環境にやさしいナノ材料を用いた光電子デバイスの実現を目指します。

◆研究に関する問い合わせ◆
中国竞彩网大学院工学研究院
先端電気電子部門‐化学物理工学専攻 ビスリ研究室 准教授
Satria Zulkarnaen Bisri(サトリア ズルカルナエン ビスリ)
E-mail:satria-bisri(ここに@を入れてください)go.tuat.ac.jp
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